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給与計算の業務は社会保険労務士の分野になりますが、税理士事務所も毎月の月次試算表を作成する上で給与計算をチェックしており、給与計算には詳しいです。
今回は給与の計算の中でも少し特殊な賞与計算について詳しくお伝えします。
従業員の社会保険料の計算方法
賞与に対してそれぞれの保険料率を乗じます。
健康保険、介護保険、厚生年金の料率は加入している保険機構によって、雇用保険料は会社の業種によってそれぞれ異なります。
健康保険、介護保険、厚生年金保険料の計算
通常の給与計算では算定基礎届を元に定められた、各従業員の等級に応じた健康保険、介護保険、厚生年金の金額を給与から差し引きます。
この等級は1年間の間に給与金額が大きく変動しない限りは、年に1回の算定基礎届による定時決定から1年間変動はありません。
一方で賞与の健康保険、介護保険、厚生年金の計算方法は、等級によるものではなく賞与額に保険料率を乗じた金額です。
具体的には、賞与金額の1,000円未満の端数を切り捨てた金額に保険料率を乗じて、50銭以下は切り捨て、50銭を超える場合は切り上げを行い、各保険料を計算します。
雇用保険料の計算
雇用保険料の計算は通常の給与計算と同様です。賞与金額に雇用保険料率を乗じて、50銭以下は切り捨て、50銭を超える場合は切り上げを行います。
従業員の源泉所得税の計算方法
源泉徴収税額表を使用します。この表は税務署や国税庁のホームページより入手の出来る冊子です。
通常の賞与の場合
(1)前月の給与から社会保険料等を差し引きます。
(2)上記(1)の金額と扶養親族等の数を「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめて税率(賞与の金額に乗ずべき率)を求めます。
(3)(賞与から社会保険料等を差し引いた金額)×上記(2)の税率
この金額が、賞与から源泉徴収する税額になります。
引用元:国税庁
賞与の金額が前月の給与の10倍を超える金額の場合
イ (賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6
ロ イ+(前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額)
ハ ロの金額を「月額表」に当てはめて税額を求める。
ニ ハ-(前月の給与に対する源泉徴収税額)
ホ ニ×6
この金額が賞与から源泉徴収する税額になります。
引用元:国税庁
前月の給与が0円の場合
イ (賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6
ロ イの金額を「月額表」に当てはめて税額を求める。
ハ ロ×6
この金額が賞与から源泉徴収する税額になります。
引用元:国税庁
賞与支給に関する会社側の手続き
賞与支払届の提出
協会けんぽに加入する事業者が賞与を支給した場合、賞与支払届を管轄の年金事務所に提出をする必要があります。
提出期限は支給日より5日以内です。
賞与にかかる会社が支払うべき保険料は、毎月の保険料と合算されて賞与支払月の翌月の納入告知書にて通知され、月末までに納める必要があります。
口座振替を利用している場合には、納入告知額通知書にて通知され、月末までに口座から振替をされます。
源泉所得税の納付
通常の給与支給時と同様に、預かった所得税を納付する必要があります。
支払期限は毎月納付の会社は給与と同様に支払った月の翌月10日、納期の特例を選択している会社は7月10日もしくは1月20日までに納付をします。
納付書は給与分の源泉所得税を納付する際のものと同じもので、給与等の下段の賞与の欄に記載をします。
賞与に関する豆知識
役員賞与には事前の届け出が必要
役員に賞与を支給する場合には、事前に届け出を提出しないと損金として認められません。
損金として認められないとは、役員に賞与を支給することそのものは違法ではありませんが、法人税法上の課税利益の計算上、費用として認められる損金として計上することが出来ないため、法人税の税額が大きくなります。
役員報酬が損金として認められるためには、支給時期が1月以下の一定の期間ごとであることと、会計期間内の各支給期間の支給額が同額であることが必要です。
これを定期同額給与といいますが、役員賞与は定期同額給与に該当しません。
よって役員賞与を支給する際には、事前確定給与に関する届出書をあらかじめ提出し、その提出内容に沿った支給をすることで、はじめて損金として認められることとなります。
未払の決算賞与を損金にするには
予想以上に利益が出た場合等の節税策の一つとして、決算賞与があります。
この決算賞与は翌期の支払いであっても、未払計上で当期の損金にすることが出来ます。
未払の決算賞与を損金にするためには、損金にする事業年度内に支給額を同じ時期に支給する全従業員に対して各々通知すること、通知した金額を事業年度終了の日の翌日から1カ月以内に全額支払うことが条件となります。
通知した金額と異なる金額を支給した場合や支給を受けない従業員がいる場合等、条件を満たさない場合には、実際に支払う期の損金になります。
退職者への賞与は就業規則に準ずる必要がある
賞与支給日前から退職予定が判明している従業員には、会社は賞与の支給をするべきなのか判断に迷うことでしょう。この場合の判断は就業規則に準ずる必要があります。
就業規則には賞与の算定対象期間や賞与の支給対象者について記載がされています。
退職者について特に確認したいのは支給日在籍要件が就業規則に記載があるかです。
支給日在籍要件とは、支給対象者について支給日に在籍している人のみに賞与は支給するという内容です。
この内容が記載されている場合は、退職予定者が賞与支給日には退職しているようであればその人には支給をする必要がありません。
この支給日在籍要件の記載がない場合については、賞与の算定対象期間に在籍していた人にも支給が必要になります。
しかし退職予定者の賞与を他の従業員と同水準で支給する必要が必ずしもあるのではなく、退職予定者と協議のうえで減額することは可能です。
賞与の回数は年3回まで
従業員に支払う賞与は年3回までは、上記の社会保険料の計算や届け出と同様の処理となりますが、年4回以上の賞与の支給は注意が必要です。
支給回数の数え方は、例外的に分割払いがあった場合には、その分割分はまとめて1回とし、かつ、その年に限り支給されたことが明らかな賞与については、支給回数に含めません。
また1年間に春季賞与、夏季賞与、秋季賞与、冬季賞与、と名称が異なる賞与を支給した場合でも、それぞれを1回と数えるためこの場合は年4回支給したことになります。
恒常的に年4回以上の賞与の支給がある場合のみ、社会保険料の取り扱いが異なります。
具体的には賞与が年4回以上支給される人については、7月1日前の1年間に支払われた賞与の合計額を12で割った金額を、賞与にかかる報酬額として算定基礎届等を提出する際の報酬額に含める必要があります。
まとめ
賞与の計算は通常の給与計算とは異なるため、間違えがちなものです。
給与計算と同様に従業員からの信頼を損ねないように会社側は十分に注意をして計算を行いたいものです。
弊社は給与計算系を直接請け負うことはありませんが、従業員が多くて給与計算が大変な場合等は専門の社会保険労務士をご紹介することもできます。
ご自身で計算されて間違っている場合は指摘させていただきますので、以後の社会保険料については給与計算で調整を行なったり、源泉所得税については年末調整で修正をする等という形でも良いかもしれません。
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