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名古屋会社設立相談所

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会社設立の豆知識
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創業融資

銀行は返済能力のある企業に融資をしたがります。返済能力を示す書類は決算書であり、財務内容・業績で判断します。

そのため、創業前の起業家を含めて過去の実績が乏しい企業は融資審査で不利になってしまいます。しかし、財務内容・業績が良くても銀行が融資をしたがらないケースがあります。

そこで、銀行の考え方を知るために、融資審査のチェックポイントとして決算書、事業計画書、企業・経営者の背景について説明します。そして、銀行取引を有利にするために、決算書の内容を改善するポイントを解説します。

決算書の内容が融資審査を左右する

融資審査を通過しやすくする改善策を知るためには、決算書の内容を良くすることが大切です。それが財務内容・業績の改善につながるからです。決算書の内容によって、融資審査で重視するポイントは次のように区分されます。

決算書の内容 属性 融資審査で重視するポイント
財務内容・業績が良い 融資しやすい企業 決算書=過去の実績
財務内容・業績が悪い
実績の乏しい企業(創業前を含む)
融資しにくい企業 事業計画書=将来の計画

融資審査チェックポイントの概要

銀行の融資審査はおもに次の3項目を重視します。自社の状況によって、銀行がチェックしているポイントを把握しましょう。

(1)決算書
貸借対照表では財務内容、損益計算書では業績をチェックします。

(2)事業計画書
利益計画や資金繰り計画など将来の目標を数字で示す書類です。

(3)会社・経営者の背景
会社の業種、経営者の社会的立場などのことを指します。会社・経営者の背景によっては、たとえ決算書の内容が良くても融資が否決されてしまいます。そのため、銀行が最初にチェックする項目です。

決算書のチェックポイント

決算書の内容から銀行は融資しやすい企業と融資しにくい企業を選別します。それでは、チェックポイントについて詳しく見ていきましょう。

決算書3つのチェックポイント

決算書では次の3つをチェックします。

(1)実質債務超過
債務超過とは、出資と内部留保(創業以来の累積利益)の金額よりも負債の金額のほうが多いことを指します。つまり、自己資本がマイナスであることを意味します。債務超過の場合、融資しにくい企業に選別されます。

債務超過というキーワードの前に「実質」と書かれている理由は、たとえ決算書上の自己資本がプラスでも、実態は債務超過に該当する可能性があるからです。

そのため、決算書のチェックポイントでも重視される項目です。

(2)自己資本比率
自己資本比率とは、現金預金、棚卸資産(在庫)など資金投入額など総資産のうち自己資本の占める割合のことを指します。この割合が高いほど借入金に依存する割合が少なく、企業の安全性(反対語は倒産リスク)を示す指標です。

銀行は倒産により融資額の回収不能を恐れるため、融資審査で自己資本比率は重視されます。業種によって異なりますが、自己資本比率の目安は40%前後です。

(3)借入金月商倍率
借入金月商倍率とは、有利子負債(短期借入金+長期借入金+割引手形)を平均月商で割った数字のことを指します。

借入金の依存度を見る指標であり、月商を目安として倍率を計算するのが特徴です。一般的には、3.0倍以内が目安になります。

貸借対照表のチェックポイント

貸借対照表では、次の視点から実質債務超過かどうかをチェックされます。
 資産価値の有無
 簿外負債(実在する債務を計上せず、自己資本の水増し額)の有無
資産価値がない、または簿外負債があると判断された場合、銀行は決算書上の自己資本からマイナスします。それでは、勘定科目ごとのチェックポイントを見ていきましょう。

(1)現金
事業活動では、現金のまま保有せず、銀行口座に預け入れるのが一般的と考えられます。そのため、銀金残高が不自然に多額の場合、資産価値がないものとして取り扱われます。

(2)売掛金・受取手形
売掛金と受取手形の合計額は売上債権であり、粉飾決算による水増し計上または不良債権をチェックして、資産価値がないかどうかを分析します。月商および回収サイトから把握できるため、不自然に多額なら水増し計上と判断されます。また、同じ得意先に対する売掛金が複数年にわたって同額なら不良債権として取り扱われます。

(3)棚卸資産
在庫について、粉飾決算による水増し計上または不良債権をチェックして、資産価値がないかどうかを分析します。月額仕入高と棚卸資産回転率(商品や材料に仕入日から売上日まで平均日数)により、棚卸資産の金額は把握できます。そのため、不自然に多額の場合、水増し計上または不良在庫として取り扱われます。

(4)未収入金・未収収益・前払費用
未収入金・未収収益・前払費用は総資産に占める割合が少ないのが一般的です。そのため、不自然に多額の場合、水増し計上と判断されて、資産価値がないと分析します。

(5)貸付金・立替金・仮払金
特に役員や関係会社への貸付をチェックします。実際は貸付ではなく、流用している可能性があるからです。不自然に多額の場合、銀行は「貸したお金を事業活動以外に流用するのでは」と不安に感じます。最悪の場合、資金使途違反と見られて、融資が受けられなくなってしまいます。もちろん、この場合は資産価値がないと分析します。

(6)固定資産
特に各勘定科目の含み損の有無をチェックします。たとえば、土地1,000万円を決算書に計上しているとします。しかし、時価400万円の場合、差額600万円は含み損として取り扱われて、資産価値がないと分析します。

また、出資金は出資先の状況によって資産価値が左右されます。仮に債務超過なら資産価値は0円であり、出資金の全額が含み損になります。

(7)買掛金・支払手形
買掛金と支払手形の合計額は仕入債務であり、簿外負債の有無をチェックします。月額仕入高と支払サイトから把握できるため、不自然に少額なら簿外負債があると判断されます。

(8)未払金・未払費用・未払法人税等・未払消費税等・預り金
特に税金や社会保険料の滞納をチェックします。滞納があれば心証は悪くなってしまいます。

(9)短期借入金・長期借入金
特にノンバンクから借入をチェックします。「ノンバンク=銀行から融資を受けられない」と判断されて、融資審査のマイナス項目です。

損益計算書のチェックポイント

損益計算書は業績の推移をチェックするため、前期の決算書と比較します。それでは、比較する項目を見ていきましょう。

(1)売上高
販売数量の増減をチェックします。

(2)売上総利益率
売上高に占める売上総利益(売上-原価)の割合のことを指します。販売単価や原価の増減をチェックします。

(3)営業利益
販売活動で獲得した利益のことを指し、銀行は営業利益から金利を賄うと考えています。

(4)経常利益
事業活動で獲得した利益のことを指し、コンスタントにかせげる能力を意味します。銀行は経常利益から借入金元本を返済すると考えています。

(5)販売費及び一般管理費
固定費(経費)の増減を勘定科目ごとチェックします。

事業計画書のチェックポイント

特に融資しにくい企業にとって、事業計画書の質が融資審査を左右します。そこで、事業計画書のチェックポイントについて説明します。

返済原資の確保

そもそも銀行は、たとえ業績が芳しくなくても返済可能な企業と判断して融資をします。そのため、事業活動により返済原資を確保できることを事業計画書に盛り込まれていることが最低条件です。

銀行が考える返済原資とは、「当期純利益(法人税等を差し引いた最終利益)+減価償却費(現金の支出が伴わない費用)」と考えています。つまり、現金収支残高に近い金額を意味します。

実現可能性

事業計画書では、返済原資の確保が実現可能かどうかをチェックします。たとえば、目標売上高を3,000万円とします。その場合、目標売上高の根拠に信ぴょう性があるかどうかを吟味します。

つまり、根拠の信ぴょう性が実現可能性の評価のカギを握っています。

本人が作成したか否か

事業計画書の実現可能性を裏付ける意味で本人が作成したかどうかについて問われます。

たとえば、事業計画書を専門家が作成したものだと判断されると、銀行は本人のやる気を疑問視します。つまり、本人の意思を反映させた事業計画書の作成であることが大切になってきます。

企業・経営者の背景のチェックポイント

すべての企業の融資審査で重視されます。チェックポイントを知り、改善できる項目はきちんと改善しましょう。

(1)業種
風俗関連業など特定の業種は融資対象企業から除外されます。具体的には、登記簿謄本の目的欄をチェックします。

(2)反社会的勢力のかかわり
暴力団、暴力団関係企業。総会屋など反社会的勢力とのかかわりや取引がある企業や経営者に対して、銀行は融資をしたがりません。

(3)経営者の背景
銀行は「この経営者は過去に貸し倒れを出していないか」「真の経営者は別にいるのでは」など経営者の資質を気にします。

(4)過去の社会問題
公害や労働問題など過去の社会問題を起こして、改善策を示さない企業に対して銀行は融資をしたがりません。

(5)犯罪歴
経営者に犯罪歴がある場合、銀行は融資をしたがりません。

(6)許認可の取得
飲食業など許認可の必要な業種は取得することが融資を受ける最低条件です。

(7)事務所
実在しない事務所、たとえばペーパーカンパニーに対して銀行は融資をしたがりません。そのため、不動産の登記簿謄本などで事務所が実在することを証明できるようにしましょう。

決算書の内容の改善ポイント

融資審査を有利にするためには、決算書を改善することが必須です。そこで、具体的な改善ポイントについて説明します。

適切な勘定科目を用いる

そもそも決算書上の勘定科目が適切とは限りません。そのため、企業の実態より低い評価をされてしまうケースがあります。そこで、適切な勘定科目の例を紹介します。

(1)臨時費用を特別損失に計上する
固定資産売却損、退職金などの臨時費用は特別損失に計上しましょう。たとえば、退職金規定のない企業の退職金について、会計ソフトの初期設定にしたがって会計処理をした場合、営業費用に計上されて、必要以上に営業利益が圧縮されてしまいます。

(2)雑収入を営業収益に計上する
たとえば、社宅家賃の従業員負担分を雑収入に計上しているとします。しかし、賃貸物件にかかる家賃の会社負担分などは営業費用(販売費及び一般管理費)に計上いるため、必要以上に営業利益が圧縮されてしまいます。

そこで、営業費用に対応させるため、社宅家賃の従業員負担分を営業収益に計上するのも一つの手です。

損益計算書の内容を改善する

損益計算書の内容を改善させるために方向性を明確する必要があります。そこで、次の3項目に分けて改善策を紹介します。

(1)売上高
 販売数量を伸ばす:新規取引先の開拓、既存取引先への販売数量拡大
 販売単価を上げる:販売単価の引き上げ交渉
 社員教育:営業・販売担当者の採用と育成

(2)原価
 仕入単価の圧縮:大量購入、仕入単価の引き下げ交渉
 外注費の削減:外注先への発注の見直し
 生産性の向上:製造工程でのロスカット、設備投資

(3)経費
 人件費カット:役員報酬の見直し、採用の見合わせ
 取引の見直し:過去のしがらみに基づく費用対効果の低い経費への支出
 費用対効果の再検証:広告宣伝費の検証
 設備投資の施策:買い取りとリースのコスト比較

貸借対照表の内容を改善する

貸借対照表の内容を改善することで、実質債務超過を解消するのはもちろん、実質的な自己資本比率を上げることにもつながります。

  • 増資:役員借入金を資本金に振り替えるための増資手続き
  • 保有資産の処分:含み損のある資産を売却して、現金預金を増やす
  • 遊休資産の有効活用:遊休資産の有効活用により資産価値を上げる
  • 私財提供:役員の私財を提供することで、「利益計上=累積赤字の解消」により自己資本を増やす
  • 役員に対する仮払金、貸付金の解消:役員報酬の増額分や役員退職金での解消、保険商品の活用(※)

(※)保険商品の活用

保険商品を利用して役員に対する仮払金や貸付金を清算する仕組みのことを指します。取引の流れは次の通りです。

1. 役員個人が役員を被保険者とした生命保険に加入する
2. 保険証券を質権(担保)として役員が銀行から融資を受ける
3. 融資額で役員が会社に対する借入金(決算書上の仮払金・貸付金)を返済する
4. 役員が銀行に対して借入金を返済する

まとめ

融資しやすい企業と融資しにくい企業のいずれも融資審査を有利にするためには、決算書の内容を良くすることがカギを握っています。そのため、特に決算書のチェックポイントを知ることが必要であり、「適切な勘定科目を用いる」など着手しやすいところから改善するように心がけましょう。

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