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創業融資は一発勝負ですが、日本政策金融公庫は自己資金を重視しています。ところが一般的な自己資金のイメージと日本政策金融公庫の考え方は違い、創業融資を引き出すためには後者を理解することが必要不可欠です。
そこで、まずは日本政策金融公庫が自己資金を重視する理由と創業融資制度について説明します。その後、日本政策金融公庫が考える自己資金を紹介します。
これらに基づき、自己資金の正しいため方、現金預金以外の資産を自己資金にする方法などを解説します。
自己資金が必要な新創業融資制度とは
実績のない会社のために設けられたのが日本政策金融公庫の新創業融資制度であり、自己資金が資金調達の成否のカギを握っています。
なぜ日本政策金融公庫は自己資金を重視するのか
そもそも日本政策金融公庫が自己資金を重視する理由は、創業してから事業が軌道に乗るまでに時間がかかるのが一般的だからです。
たとえば、売上高が獲得できなくても、借入金の返済をしたり、家賃などの諸経費を負担したりしなければなりません。また、予想外の出費で資金繰りが苦しくなる可能性があります。そのため、日本政策金融公庫は万が一の時に備えて、数カ月分の経費相当分を確保し、ゆとりを持った資金計画を立てることを奨励しています。
特に介護事業やクリニックを創業する場合、サービス提供してから入金されるタイミングが遅いため、なおさら資金計画を立てることが大切です。
新創業融資制度では連帯保証人と担保を差し出す必要がない
新創業融資制度は連帯保証人が不要であり、個人資産などの担保を差し出す必要がありません。たとえば、法人設立の場合、返済不能に陥っても代表者個人の財産を失うリスクが回避できます。
自己資金は最低でも融資総額の10分の1以上が必要
実績のない会社が対象のため、日本政策金融公庫から見ればリスクの高い融資です。
そこで、事業が軌道に乗るまでの時間を加味して、融資総額の10分の1以上の自己資金を確保することが求められます。たとえば、1,000万円の融資を受けたいとします。融資総額は1,000万円のため、最低「融資総額1,000万円÷10=100万円」の自己資金の確保が必要です。
現実にはどのくらいの自己資金が必要なのか
上記のように自己資金が融資総額の10分の1以上というのは新創業融資制度の受けるための最低額にすぎません。そこで、「2013年度新規開業実態調査」によると、創業資金の調達先のうち、自己資金の割合は27%です。
創業融資の自己資金は何を指すのか
そもそも自己資金とは、手持ちの現金のことを指します。しかし、自己資金かどうかを判断するのは日本政策金融公庫です。そこで、創業融資で自己資金と認められる範囲について説明します。
事業用に運用する資金が自己資金
そもそも事業活動を行うために創業融資を受けます。当然、自己資金は事業用に運用することが大前提であり、別の用途に流用すると判断されれば、創業融資を受ける場合の自己資金とは認められません。
たとえば、初期投資に充てる手持資金のはずが、実はプライベートの借入金返済の財源とすることが発覚した場合、自己資金から除かれます。
経営者の貯金額であることが求められる
日本政策金融公庫が自己資金を重視する理由のひとつに経営者の資質が挙げられます。事業が軌道に乗るかどうかの大事な要素となり、創業準備の段階で自ら貯金していることが求められます。
貯金額を通帳で確認できることが必須
自己資金が確保しているかどうかを客観的に確認するため、通帳に記帳し、日本政策金融公庫が確認できることが必須です。つまり、タンス預金は客観的に確認できないため、創業融資では自己資金として認められません。
親、親戚から資金援助を受ける場合は返済不要であることアピール
自己資金は経営者の手持ちの現金です。しかし、特に初期投資の必要な業種は経営者の貯金額だけでは十分な自己資金を確保できない可能性があります。
そこで、親や親戚から資金援助を受けるケースは十分に考えらます。ところが、日本政策金融公庫に自己資金として認められもらうためには次の2つポイントを押さえる必要があります。
贈与契約書を交わす
親や親戚からの贈与な場合、資金援助額の返済が不要です。借入金返済と違い、出費が伴わないため、事業が軌道に乗るまでの経費の支払いなどに充てることができます。
返済不要であることをアピールする
日本政策金融公庫は「贈与契約書が単なる形式だけで、本当は返すのでは」と慎重になる傾向にあります。
そのため、ただ贈与契約書を交わすだけでは不十分で、親や親戚に対して返済不要であることをアピールすることが大切となってきます。
個人事業主と法人の自己資金について解説
個人事業主と法人の自己資金の基本的な考え方は少し異なります。
個人事業主
事業のために使うことのできる資金のことを指します。
法人
個人事業主と同じように事業のために使うことのできる資金ですが、その目安は登記上の資本金となります。資本金は会社創業時の運転資金とも言えます。
日本政策金融公庫に認められる自己資金の増やし方について解説
「経営者の貯金額」や「返済不要な親、親戚からの資金援助額」のほかにも、日本政策金融公庫から自己資金と認められる項目が存在します。
みなし自己資金をアピールする
すでに初期投資して分を自己資金として認められるケースがあります。この自己資金のことを「みなし自己資金」といいます。
たとえば、開業前に賃貸物件の敷金や店舗の設備費用などの初期投資額を500万円とします。手持ちの現金が300万円の場合、自己資金は「手持ちの現金300万円+みなし自己資金(初期投資額)500万円=800万円」となります。
法人なら現物出資を利用する
そもそも現物出資とは、法人が現金預金の代わりにパソコン、サーバー、自動車などの現物の出資を指します。
たとえば、現金預金500万円に加えて、300万円の自動車を出資に充てれば、資本金は「現金預金500万円+自動車300万円=800万円」となります。つまり、現物出資を利用することで手持ちの現金よりも多い金額が自己資金として日本政策金融公庫に認められます。
ただし、現物出資は法人設立に限定されます。しかも、現物出資額が500万円を超えると手続きは面倒です。そのため事実上、現物出資により自己資金を増やせる額は500万円以内が限度といえます。
共同経営者から出資してもらう
たとえば、単独での手持ちの現金が足りない場合、共同経営者に出資してもらえば自己資金と認められる可能性があります。もちろん、共同経営者は形式だけなく、役員に就任させることが必要です。
しかし、共同経営者から出資してもらうことを経営権の一部を譲り渡すのと同じです。
たとえば、本人が500万円、共同経営者が500万円、計1,000万円を出資したとします。経営権を意味する議決権はそれぞれ50%ずつとなり、たとえば本人がある人を役員に就任させたいとしても、共同経営者の賛成が得られなければ実現することはできません。役員を就任させるためには議決権の50%超の賛成が必要だからです。
このように共同経営者に出資してもらう方法は自己資金を増やせる反面、経営権の一部を譲り渡すリスクが潜んでいます。
自己資金が「見せ金」と判断されたら創業融資は受けられない
自己資金が「見せ金」と日本政策金融公庫に判断されると、創業融資は受けられる可能性は激減してしまいます。
そもそも見せ金とは何か
見せ金とは、事業用に運用できると偽った手持ちの現金のことを指します。
たとえば、経営者の通帳残高はほとんどなかったのに、突然300万円が銀行口座に入金されれば、不自然と思われても仕方ありません。
仮に「一時的に銀行口座へ預けて入れただけなのでは」などと日本政策金融公庫に疑われたら、自己資金としては認められません。
また別の例として、法人設立での出資額(資本金)を設立直後に引き出した場合、事業以外に流用したと判断される可能性があります。たとえそれが見せ金でなくても、誤解された時点で、自己資金として認められなくなってしまいます。
見せ金と判断されないための方法
見せ金と判断されないためには、自己資金の確保の仕方がポイントになってきます。たとえば、毎月定期的に10万円ずつ銀行口座に預入貯金するなど、計画的に自己資金を確保していることを目に見えるようにすることが挙げられます。
要するに自己資金を事業用に運用することを日本政策金融公庫に示すことが大切となってきます。
自己資金のため方について解説
創業融資を引き出すためには、自己資金のため方がカギを握ります。そこで、2つの方法を解説します。
無駄な出費をせず、貯金に回す
創業前に勤務先から振り込まれた給料の一部を貯金することが自己資金をためる王道といえます。そのためには、無駄な出費を避けて貯金に回す必要があります。貯金額を銀行口座へ預け入れて、通帳の記録に残しておきましょう。
事業計画書で必要資金を下げるように練り直す
そもそも初期投資の金額が少なければ、必要資金と融資による資金調達の必要額もが少なくなります。
たとえ自己資金が少ない金額でも必要資金に対して相対的に自己資金の割合が高くなるため、創業融資を引き出すのに有利となります。その必要資金を下げるためには、事業計画書を練り直すことが有効です。
たとえば、賃貸物件の場所を駅前から路地裏にすることで、敷金などの初期投資額を下げることができます。また別の例として、物販を開業する場合、注文を受けてから発注する仕組みにすることで、商品の仕入を必要最小限にすることが可能です。
まとめ
日本政策金融公庫から創業融資を引き出すためには、自己資金が重要となってきます。自己資金には経営者の資質、貯金の仕方など創業前の計画性など事業を軌道に乗るかどうかの情報が詰まっています。
創業融資を確実に引き出すためには、日本政策金融公庫の視点から見た自己資金を理解し、融資交渉で活用することがポイントとなってきます。
当事務所では創業融資の実績が多く、成功率も94%を超えています。創業融資で悩んでいましたら、お気軽にご相談ください。
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