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資金繰り表を見ることで、現金収支と現金預金残高が把握できます。
金庫の現金残高や通帳残高と一致するため、社長の実感に即した資料といえます。また、黒字なのに資金繰りが苦しい原因が分かり、事前対策を施すのに有効です。
しかも、現金収支の内訳が細かく分析できるため、どんぶり勘定からの解消にもつながります。そこで、経営管理における資金繰り表の位置づけ、資金繰り表の見方、返済能力の目安となる返済原資をメインに解説します。
資金繰り表の位置づけと黒字倒産
資金繰り表で経営管理をすれば、倒産リスクを軽減することができます。
どんぶり勘定により「勘定合って銭足らず」の状態に陥り、黒字倒産の憂き目に遭うのは避けたいところですよね。
「勘定」とは損益計算書の利益、「銭」とは資金繰り表の現金預金残高のことを指します。そこで、黒字倒産の視点から資金繰り表の位置づけについて説明します。
黒字倒産とは
損益計算書の利益はプラスなのにもかかわらず、資金ショートして事業が存続できなくなる黒字倒産はよくある話です。
たとえば、毎年利益を計上し、法人税などを支払っている会社でも、現金預金残高が不足し、借入金の返済ができなければ、銀行融資を受けることができません。
その結果、事業存続が危うくなり、黒字倒産に至ることさえあり得ます。
粉飾決算(利益の水増し計上)以外の黒字倒産のおもなパターンについて見ていきましょう。
不良債権
売掛金などの債権は「いずれ入金され、現金預金残高が増加する」という前提に基づいて、資産計上をし、売上高と利益がともにプラスされます。
そのため、予定通りに債権の回収により現金化されれば、利益と現金預金が一致します。
しかし、不良債権になった場合には、利益はプラスのままにもかかわらず、現金預金残高は増加せず、資金ショートにつながる可能性があります。
過剰在庫
過剰在庫とは、商品などの在庫を必要以上に抱えることを指し、黒字倒産の原因になり得ます。
そもそも在庫は、売掛金などの債権と同じように現金化されることを前提としております。過剰在庫は期末に商品在庫に振り替えた結果、売上原価が小さくなって利益がプラスになります。
しかし、在庫の購入には現金支出が伴い、現金預金残高は減少します。その結果、借入金の返済などの支払い財源が不足し、事業存続を危うくしてしまいます。
資金繰りの苦しい会社にも黒字倒産のメカニズムが当てはまる
赤字企業以外で資金繰りの苦しい会社にも、黒字倒産のメカニズムが当てはまります。
ただ、倒産しない理由は「銀行融資を受けている」「経営者のポケットマネーを出資や会社貸付により資金を投入している」などにより現金預金残高の不足額を賄っていると考えられるためです。
知らず識らずのうちに借入金残高と返済額が増加すれば、資金繰りの苦しい要因になりかねません。
資金繰り表の活用で黒字倒産は防止できる
資金繰り表を活用することで、経営管理のポイントを「利益」から「現金預金残高」にシフトします。
現金預金残高により「売掛金管理」や「過剰在庫を防止するなどの在庫管理」などの重要性が視覚化でき、黒字倒産の防止にもつながります。
資金繰り表の見方
どんぶり勘定にならないためにも、資金繰り表により、現金収支を細かく見る必要があります。
フォーマットは様々ですが、中小企業の実情に即し、銀行融資を受けている会社向けの資金繰り表の見方について説明します。
経常収支
経常収支とは、借入金元本の返済を除いた通常の事業活動における現金収支のことを指します。それでは、経常収支を次の項目ごとに細かく見ていきましょう。
営業収支
事業活動のうち、営業活動による現金収支のことを指し、次の構成で成り立っています。
①売掛金回収=売上入金
売上高に伴う入金額のことを指し、掛売上の場合には売掛金がきちんと回収されているかどうかのチェックがポイントになります。
②仕入代金(買掛金)の支払い
商品の購入代金や外注加工費など変動費(販売数量に比例して増加する費用)にかかる支払いのことを指し、支払いの滞りがないかどうかをチェックします。支払いの滞りがあれば、商品の供給が受けられなかったり、外注先に発注できなかったりするなど、営業活動の停止につながりかねません。
③販売管理費=固定費
賃貸家賃や人件費など営業活動にかかる経費のことを指し、販売数量に関係なく一定額を支払わなければならないのが特徴です。
営業外収支
営業外収支は本業(営業活動)の以外の現金収支であり、次の構成で成り立っています。
①営業外収入
預金利息や配当金など、本業以外で入金される金額のことを指します。
②営業外支出
借入金の返済に伴う金利負担額など本業以外で現金支出する金額のことを指します。
税金・社会保険
税金・社会保険は上記(1)または(2)に含める方法もありますが、返済原資を確保する視点から別項目に分類しました。税金・社会保険を滞納している場合、差押え処分を受けるリスクがあるため、借入金元本の返済よりも優先しなければならないためです。
おもに法人税、消費税、源泉徴収税額、住民税、社会保険料などの項目が挙げられます。
財務収支
財務収支とは、営業活動や投資活動を実施し、維持するために「いくら資金調達をしたのか」および「どのぐらい返済したのか」といった現金収支のことを指します。おもに銀行融資による資金調達と借入金返済などの間接金融が挙げられます。それでは、詳しく見ていきましょう。
借入金入金
銀行融資はもちろん、代表者などの役員借入金なども該当します。
実績資金繰り表により、「どの時期に借り入れが発生しているのか」について把握することで、資金繰りが苦しくなる時期の分析が可能となり、現金支出を抑えるなどの事前対策を施すことができます。
返済支出
おもに借入金元本の返済額が挙げられ、代表者などの役員借入金の返済も含まれます。毎月コンスタントに支出する金額を把握することがポイントになります。
投資収支
投資収支とは、おもに投資のために資金を投入する金額のことを指し、経常収支と財務収支の後で見ることがポイントになります。
不確定要素の投資収支を考えるとき、現金収支が伴う経常収支と財務収支の後に現金預金残高がプラスであることを事前確認する必要があるためです。
たとえば、1,000万円の設備投資を検討するとします。
「経常収支はいくらプラス」や「設備投資額1,000万円を賄うのに借入金入金はどのぐらい必要なのか」など経常収支と財務収支をシミュレーションすることで、現金預金残高を予測することができます。
予測した現金預金残高を検証することで、「この時期に設備投資をすることが的確かどうか」の意思決定が可能になります。
資金繰り表と返済原資
資金繰り表から返済原資を見ることができ、銀行融資の資金用途によってチェックするポイントは異なります。
経常運転資金・増加運転資金
経常運転資金は一般的な運転資金、増加運転資金は売上増加に伴う仕入などに対応する運転資金のことを指します。
商品や製品を販売し現金化されるまでの間に不足する現金預金残高を賄う運転資金であり、返済原資は売掛金になります。
資金繰り表の「売上入金=売掛金回収」に記載され、得意先別などで管理して回収漏れを防止することがポイントになります。
設備投資資金・特殊な運転資金
設備投資資金は設備投資の財源に充てるための資金であり、特殊な運転資金は賞与資金や納税資金などであり、将来の利益を獲得するために資金投入する借入れになります。
もちろん、返済原資は利益であり、損益計算書に記載されている「利益+減価償却費(現金支出の伴わない費用)」で計算します。
ただし、資金繰り表の経常収支を参考数値として活用することができます。
たとえば、損益計算書の売上高や利益を計上しても、売掛金の未回収などにより、現金預金残高が増加していない場合、返済原資を「利益+減価償却費」よりも経常収支で見たほうが会社の実情に即しています。
返済原資一覧
分類 | 内容 | 返済原資 |
---|---|---|
経常運転資金 | 一般的な運転資金 | 売掛金 |
増加運転資金 | 売上増加に伴う仕入などに対応する運転資金 | 売掛金 |
設備投資資金 | 設備投資の財源となる資金 | 利益+減価償却費 ※参考数値:経常収支 |
リスケジュールの交渉に資金繰り表は最適
資金繰り表の見方の応用編として、リスケジュール(返済猶予)での活用方法について説明します。
経営改善計画書では不十分
資金繰り表をリスケジュールに活用する理由は、経営改善計画書で提示する返済原資だけでは不十分のためです。
確かに経営改善計画書は年単位で作成するため、改善後の業績を1年スパンで提示することはできます。
しかし、銀行が知りたいのは、1~2ヵ月後など近い将来、会社が倒産してしまうかどうかです。
そのため、経営改善計画書のみでは、融資担当者の不安を払しょくするまでに至らないでしょう。
資金繰り表を活用するポイント
銀行側の不安を払しょくするためには、事業改善計画書の返済原資に説得力を持たせることに尽きます。
そのためには、近い将来、会社は安泰であることを示し、資金繰り表により提示する現金収支に根拠を持たせる必要があります。
たとえば、大口の得意先からの売掛金が1ヵ月後に回収される予定とします。売掛金を回収できることにアピールするためにも、経理体制や得意先の規模などを融資担当者に細かく説明することがポイントになります。
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