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設立から2期目までは消費税が免税であり、課税事業者に該当するのは3期目からである、ということはよく知られていますが、消費税には特定期間という考え方があり、この特定期間に関してはあまり知られていません。
せっかく設立をしたのに2期目から課税事業者に該当してしまう場合は、免税期間のメリットを受けることができませんので注意が必要です。
今回は特定期間に着目しながら、消費税の課税事業者に該当するかの判断を確認しましょう。
免税事業者に該当する要件とは
免税事業者に該当する事業者とは、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者です。
基準期間とは課税期間の2期前の期間をさすため、新たに会社を設立をした法人は基準期間が存在しませんので設立1期目と2期目は原則として免税事業者となります。
よって、課税売上高が設立当初から1,000万円を超えている事業者であっても、課税事業者に該当するのは3期目からとなります。
しかし、平成25年1月1日以後に開始した事業年度については、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合、かつ給与等支払額の合計額が1,000万円を超えた場合は、当課税期間から課税事業者となります。
よって会社設立から2期目までを免税事業者にするためには、特定期間の課税売上高、給与支払額のいずれかを1,000万円以下とする必要があります。
また基準期間のない事業年度であっても、その事業年度の開始の日における資本金額が、1,000万円以上である場合、特定新規設立法人に該当する場合は、免税事業者に該当せず、設立1期目から課税事業者に該当をします。
特定期間とは
法人の場合は、その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間をいいます。よって設立1期目に特定期間はありませんが、設立2期目の課税事業者に該当するかの特定期間による判断は、設立1期目の前半6ヶ月が期間の対象です。
特定期間における課税売上高
特定期間における課税売上高とは、前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間の売上高から、返品、値引き、割戻しをした対価の返還等の金額を差し引いた額です。
特定期間における給与等支払額
特定期間における給与支払額とは、所得税の課税対象とされる給与、賞与等が該当します。
特定期間における課税売上高
特定期間における課税売上高が1,000万円を超えないようにするためには、どのようなことに留意すれば良いのでしょうか。
会社設立時期を検討する
課税売上高が設立当初から1,000万円を大きく超えると見込まれる大会社の子会社等については調節が難しいですが、6ヶ月の課税売上高が1,000万円前後と予測される場合には、会社設立時期を検討することで、算出対象の課税売上高を調節することが出来ます。
例えば年始に売上が伸びる傾向のある事業で、1月から6月の課税売上高が1,200万円、2月から7月の課税売上高が800万円と予想される場合、2月に会社を設立することで、2期目の特定期間での課税事業者に該当するかの判定は、免税事業者となります。
また第1期目が8カ月未満である場合には、特定期間が6ヶ月より短くなり、判定に算入される課税売上高が少なくなります。
設立後の調節はなるべく避ける
設立1期目から6ヶ月間の課税売上高が1,000万円を超えないようにと、あえて売上高を落とすのは得策ではありません。
売上は経営するにあたり必須のものであり、消費税のためにあえて縮小をすることで、事業展開のタイミングを逃してしまうといったような、消費税の納税以上にデメリットが生じる可能性があります。
特定期間における給与等支払額
特定期間における給与等支払額が1,000万円を超えないようにするためには、どのようなことに留意すれば良いのでしょうか。
設立時から大人数で始める場合は注意
6ヶ月間の給与等支払額が1,000万円であるということは月に約166万円、一人当たり月給20万円を支給しようとすると8人が限度です。
設立時であっても従業員がいる場合は給与を支払う必要があるため、大人数で事業を開始する場合には、消費税の特定期間の判定においてはその支払額に注意が必要です。
社長以外の役員登記の時期を検討する
特定期間における給与等支払額について1,000万円を超えないようにするために、給与等の支払金額を特定期間中に調節する方法が策として考えられます。しかし役員報酬を損金に計上をするためには、定期同額給与が原則であり、期間中の役員報酬の変動を行うことには規制があります。
よって特定期間における給与等支払額のうち役員報酬を調整するには、金額ではなく支払時期を調節する必要があり、役員の登記の時期をずらすことで意図的に1,000万円を超えないようにすることが出来ます。
賞与の支払日を検討する
特定期間における給与等支払額とは、所得税の課税対象とされる給与、賞与等が該当します。(所得税が非課税とされる通勤手当、旅費等は該当せず、未払額は含まれません。)
よって賞与等の大きな金額の支払いがある場合には、特定期間外の日を支払日とすることで、1,000万円以下に抑えることが可能です。
上記①の例のように設立時から8人に月給20万円を支給した場合、特定期間の給与支払額は960万円であり、特定期間内にさらに賞与を支給しようとすると、消費税の特定期間の判定においては8人に対して40万円以内の賞与のみの支給しか出来ません。
40万円超の賞与を支給する場合は、設立1期目の6ヶ月を経った後に、支給日を設定することで、特定期間の判定の給与支払額に算入をさせないようにしましょう。
あえて課税事業者を選択する場合もある
免税事業者に該当するための要件等をご紹介致しましたが、免税事業者に該当しても、課税事業者を選択する方が有利な場合があります。課税事業者選択届出書を提出することで課税事業者を選択することが出来ます。
消費税の還付が見込める場合
消費税は預かった消費税よりも支払った消費税が多い場合は、その差額について還付を受けることが出来ます。
設立当初に多額の設備投資をした場合、課税売上が少ない場合等は消費税の還付を受けることが出来る可能性が高いです。
還付を受けるためには課税事業者であり、かつ原則課税方式を選択していることが必要でるため、あえて免税事業者は課税事業者になる方が有利となります。
適格請求書を発行する場合
平成35年10月1日より適格請求書等保存方式が導入をされます。適格請求書保存方式とは、適格請求書という定められた書式の領収書類でないと仕入税額控除の計算の対象取引とみなされないという制度です。
この適格請求書を発行するためには、税務署に申請を行い、登録を認められた事業者である適格請求書発行事業者に該当する必要があり、この適格請求書発行事業者として申請出来る事業者の条件として課税事業者であることが定められています。
よって適格請求書を発行する場合は、免税事業者は課税事業者になる必要があります。
まとめ
消費税の免税事業者に該当するかの判断について、特定期間に着目しながらご紹介致しました。特定期間に関するポイントは、課税売上高と給与等支払額のどちらか一方が1,000万円を超えた場合は課税事業者に該当せず、両方が超えた場合に課税事業者に該当するという点です。
消費税の判定については、知識によって税額が大きく変わりますのでしっかりと押さえておきたいものです。もし、消費税の判定等で不安がございましたら、弊社にご相談くださいませ。
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